C&R Creative Academy

父から受け継いだ“好きなことを徹底的にやる”の精神で突き進む

クリーク・アンド・リバー社(C&R社)が運営するC&R Creative Academy(以下、アカデミー)責任者佐藤が、卒業生にインタビューして、本音で語ってもらうシリーズ。

今回インタビューをしたのは、COYOTE 3DCG STUDIO(以下、COYOTE)で現役キャラモデラーとして活躍されている3DCGキャラクターモデルクラス卒業生の遠藤さんです。
理学療法士から異業種であるゲーム業界に挑戦されたきっかけや、独学とアカデミーとの違い、そしてクリエイターとしての心構えなどをお話しいただきました。


[インタビュアー]
C&R Creative Academy 責任者:佐藤浩平

[インタビュイー]
3DCGキャラクターモデルクラス卒業生:遠藤さん(2022年5月卒業)


理学療法士からキャラモデラーに転身!アカデミー初の離島出身者の努力

佐藤(C&R Creative Academy責任者)※以下、佐藤:
遠藤さんは以前はどのようなお仕事をされていたのですか?


遠藤さん(卒業生)※以下、遠藤:
前職は病院で理学療法士として5年ほど働いていました。その後、アカデミーで1年間勉強をして、現職のCOYOTEに就職しました。

佐藤:
ゲーム業界に就業して約半年経ったかと思いますが、お仕事には慣れましたか?


遠藤:
和気あいあいとしたした雰囲気でとても楽しい職場です。社員の皆さんが本当に優しくて…。自分の生まれが種子島ということもあって「都会は怖いもの」という漠然としたイメージがありましたが、全くそんなことはありませんでした。

佐藤:
アカデミーに入校するまで種子島で暮らしていたのですか?


遠藤:
いいえ、高校2年生で島を離れ、鹿児島県の本土にある通信制の高校に通っていたんです。そこで初めて一人暮らしやアルバイトを経験しました。その後、理学療法士の専門学校に入学し、卒業する21歳までは鹿児島にいましたね。卒業後は、兵庫や福岡の病院で働きました。

佐藤:
離島出身の方は、アカデミーでは後にも先にも遠藤さんだけです。高校生の頃から島を離れて一人暮らしをしていたのですね。


遠藤:
そうですね。4人兄弟なのですが、実家を離れるときも父に「勝手にしろ」といった感じで背中を叩かれながらでした。父はいわゆる九州男児なんです。

佐藤:
お父さんは昔ながらの人だったのですね。


遠藤:
そうですね。父が自営業だったことも僕が高校を転校した理由にも繋がってくるのですが、ある日従業員とのトラブルが起きてしまって。それがきっかけで屋久島に活路を見出し引越しました。

新しい事業を展開したところ軌道に乗って、兄弟4人は無事に学校に通って卒業することができました。このような環境でしたから、父は子どもを養うことで精一杯で一緒に遊ぶ時間が取れなかったんです。父はそのことを申し訳なく思っていたみたいで、「ごめんな」と言われたことがありました。

実は、父は3年前に他界しました。父が最期のときに感じたのは、僕が親だったらそこまでは出来ないなと。子どもたち4人だけではなく、会社の従業員やその家族もしっかりと守ってきたわけですから。その体験談や苦労話をもっと聞きたかったですね。

佐藤:
深い話ですね。お父さんがご自分で事業を起こして、苦労しているのを子どもながらに見てきたこともあって、高校を卒業して資格を取るために理学療法士の学校に行ったのですか?


遠藤:
その通りです。親の背中を見てきたことが進路選択に大きな影響を与えましたね。父からはずっと人を雇用する側になるよう言われてきましたが、裏切られたり経営で大変な思いをしたりしてきた父の姿を見てきたので…。反面教師じゃないですが、安定した仕事に就きたいと進路を選択しました。

佐藤:
お父さまの姿が原点で、その反動もあって手堅い職業で働かれて、最終的にアカデミーの門を叩いたわけですが、その時期の心境の変化はいかがでしたか?


遠藤:
まず21歳で理学療法士として働くようになり、社会人としてのさまざまな学びがありました。まず自分が勉強をして理解するということ、その上で得た正しい知識を相手にきちんと伝えることが大事だと。さらに、相手に心を開いて話を聞いていただくために、これまでの僕自身の経験を交えてお話をするなど、伝え方についても真剣に学びました。

社会人として仕事に向き合う毎日を送っていたある日、とても驚いた出来事がありました。職場で個人の売り上げを調べたときに、僕一人で一ヶ月に300万ほど売り上げがあったそうです。逆に、僕よりも経験のある人の売り上げは100万ほどだったようで。それでも給料は僕のほうが低いことにわだかまりを持ってしまって…。

佐藤:
成果を出しているにも関わらず。


遠藤:
そうですね。頑張っても成果として報われないのはどういうことなのかなって。医療現場では年功序列で、勤続年数が長ければ役職が付いて給与が上がる。経験が浅ければ、どれだけ必死に頑張っても、評価はされても報酬は変わらないところにモヤモヤして。

ちょうどその時期は「世の中に向かって自分の作品を出したい」と考えて、動画を制作し始めたころでした。アニメーションを作ろうと思って、独学で絵を描いてパラパラ漫画にしていました。「自分で1枚1枚絵を描くのはしんどいな」と思っていたときに、『Blender』に出会い、触りだしたところ見事にハマってしまいました。

理学療法士の仕事も好きだったのですが、『世の中に僕が作った作品を出して、色々な人に見てもらいたい、僕の知名度を上げたい』という欲求が高まると、『理学療法士として頑張っていこう』という意識が徐々に薄れていきました。仕事をして技術に見合った報酬が欲しい、なおかつ作品が名前と紐づく仕事に就きたいとの意識が芽生えたんです。

理学療法士として「ありがとう」という患者さんの感謝の言葉は心に残りますが、そのことで僕の名前が世の中に出ることはまずありません。この一連の出来事がアカデミーに入校したきっかけでした。

▲遠藤さんの「作品を世に出して知名度を上げたい」という欲求は、クリエイターを目指す方にとっては共感できることではないだろうか。

本格的にクリエイターを目指そうと思ったきっかけはあの動画?『キャラクター』に焦点を定めた理由とは

佐藤:
理学療法士をされていて、自分の表現を始めたツールがパラパラ漫画や動画制作だったというのは、YouTubeの影響が強かったんですか?


遠藤:
そうですね。鉄拳さんのパラパラ漫画を見てボロボロと泣いてすごく感動しました。

佐藤:
鉄拳さんがきっかけなんですね!すごいなぁ。確かにクオリティが高いですもんね。
そこからクリエイティブの素晴らしさを感じて自分でも作るようになって、やればやるほどクオリティが上がっていき、それが評価される世界に身を置きたいと感じた訳ですね。


遠藤:
おっしゃる通りです。

佐藤:
話を聞いた限りだと、『モーションクラス』になるんじゃないか?と思うんですが、実際に選んだのは『キャラクタークラス』でしたよね?その選択にはどのような経緯があったんですか?


遠藤:
そうですね。独学で一通りやっていた『エフェクト』を強く出して、『モーション』や『カメラワーク』を付けたりといったことを、作品として出せればいいなと。ただ『キャラクター』のクオリティを出すには勉強が必要で…。『キャラクター』は頑張ってもどうしても『似ないし可愛くない』という苦手意識があったので、それを克服したかったんです。

『アーティスト』と『クリエイター』の違いとは

遠藤:
アカデミーの最初の頃の話になりますが、『シャープペンシルを一本作ってくる』という課題があって。どうしても『この人すごい』『ズバ抜けてる』『ヤバい奴が来た』と賞賛されたくて、かなり自信のある作品に仕上げて先生に提出したんです。

佐藤:
もちろん思われたいですよね。


遠藤:
同期の誰よりもBlenderでCGに触れている自信があったので、「一味違うんだよ、僕は」っていうのを見せたかったんですよ。頑張って仕上げてスタイリッシュな画角でシャーペンを作ったんですね。
(佐藤に実際の作品を画像で見せて)僕の中では『これはカッコイイ!』ぞと。

▲シャープペンシル課題の1回目の提出作品

佐藤:
(画像を見て)確かに真上からの構図でスタイリッシュですね。


遠藤:
真上から横に置いたような感じで実写のように作って、松浦先生(3DCGキャラクターモデルクラス講師)に評価してもらいました。先生からは「モデリングは確かにきれいにできていますね。ただ、もっと画角を目一杯に使ってください」と言われて…。そこで何を勘違いしたのか先生が求めているのは激しさだと解釈してしまったんです。当時の僕は、躍動感であったり、誰とも違うオリジナリティが一番大切で、その日は眠らずに一晩で作り直して提出しました。(再提出画像を見せる)

▲シャープペンシル課題の再提出作品。骸骨がペンを持っているような構図になっている。

佐藤:
(画像を見て)すごい!シャーペンと骸骨の手とどちらが主役なのか分からないし、草の中に隠れていたりしてとても面白いですよ。


遠藤:
しかし、先生からは「君は僕の話の何を聞いていたんだ」と怒られました。

佐藤:
僕だったらこれを作ってきたら褒めますけどね。


遠藤:
僕も褒められると思って提出したのですが…。厳しい世界だなと痛感しました。

ちょうどその後に、『アーティスト』と『クリエイター』の違いについて佐藤塾長のスピーチを聞く機会があって、『クリエイター』はいかにクライアントの要望を忠実に再現できるか、『アーティスト』は0から1を体現できるか、というお話で気付いたんです。僕はそこを履き違えていたんだなって。そのスピーチを聞いて、初めて松浦先生の求めていることが分かりましたし、考え方が変わりました。

佐藤:
自己アピールでは無くて『こういう物を作ってくれ』という注文に対して、クライアントの要件を満たす作品を作らなきゃいけないことに気付けたんですね。

▲『アーティスト』と『クリエイター』の違いについて、アカデミーでは大切に教えており、本気でプロのクリエイターを目指す上でしっかりと理解する必要がある。

クリエイターとして一歩踏み出して、これからのこと

佐藤:
生きぬく力と言いますか、自分主導で物事を進める原形が幼少期の体験にありますね。
さて、遠藤さんはアカデミーに入って『キャラクター』を勉強してCOYOTEに就職をされました。しばらくは『キャラクター』専門でいくのでしょうか。


遠藤:
そうですね。『キャラクター』は今でも学ぶことが多いです。上には上がいるので、僕はまだまだ勉強中の身だと思って仕事をしています。

佐藤:
元々『モーション』や『エフェクト』なども独学でされていたわけですが、最終的な目標はどこになるのでしょうか?


遠藤:
パラパラ漫画を描いた原点から、5分ほどの動画としてCG作品を作りたいと考えています。鉄拳さんのように周りを感動させるような作品が目標です。趣味でギターの弾き語りをするのですが、ミュージックビデオのように歌を流したいので長さは5分設定。世の中に作品を出して自分の名前が売れるのは今でも夢のひとつです。

佐藤:
すごいですね。鉄拳さんで感動した遠藤さんの作品で、次は誰かが感動してクリエイティブ業界を目指す人が出てくるかもしれません。
自分が本当にやりたい職を見つけて、その職に就いている人は多くはないと思います。やりたい仕事ができている今の状況についてどう思われますか。


遠藤:
CGと出会ってから楽しくて仕方なくて、前職の仕事が終わってから深夜まで、休みの日には1日中没頭して作業していました。今の職に就いてからは僕の中では満足する作品を提出しているつもりですが、フィードバックが修正ばかりだとやはり悔しいですね。それでも修正する作業は苦ではなく、むしろ楽しんでやっています。

佐藤:
クリエイターとして活き活きと活動されているのが伝わってきます。


遠藤:
繰り返しにはなりますが、「悔しい気持ち」はいつも心のどこかにあります。アカデミーで勉強していた時も、7歳年下の技術力の高い同期がいました。CG業界には同じタイミングで入りましたが、その若さに羨ましさを感じたことを今でも覚えています。そして、その差を埋める為には寝る間も惜しんで頑張るしかないと。やっぱり負けたくないですからね。技術面に関して同期は更に上手くなっていくはずですから、差別化できるアプローチとして、SNSへの投稿はずっと続け、最近ではAIの画像の勉強もしています。

佐藤:
本当に好きで好きでたまらなくて、いつまでも作業をしていたい願望が、とめどなく湧き上がってきて止まらないようですね。

アクセルを踏んで、自分の足で自分の人生を進んでいくためには

佐藤:
取り憑かれるほどにのめり込む人はなかなかいないですよね。「天職です」「楽しいです」って言われるのはすごくありがたいことです。
以前の遠藤さんのように満足できない現状を憂いて、自分の本当にやりたい世界を見つけてアクセルを踏んで進める人は多くないでしょう。大多数はやりたい道に進むことができずにもがいていると思います。先駆者としてアドバイスをお願いします。


遠藤:
そうですね。やりたいと思ったら即行動です。私は、始めたことが上手くいかずに何度失敗しても、最初の気持ちを貫き続けた父の姿を見てそう信じて生きてきました。きっと誰かに言われて進んだ道であればすぐに諦めていたはずです。早ければ早いほど良いのかもしれませんが、年齢は関係ありません。心の底からやりたいと感じたなら、何よりもまずは行動に移すことが大事です。

佐藤:
未来の自分が後悔しないように、やりたいと思ったことに正直に進んで欲しいということですね。


遠藤:
僕は理学療法士として堅実に働くこともできましたが、やりたい気持ちを最優先して今の自分がいます。きっと10年後に振り返っても『この道で良かった』と思うはずです。今の時点で、上手下手は関係ありません。好きなことを真面目に楽しくやって、一期一会を大切にしていたら、それが信頼へと繋がっていくのではないでしょうか。佐藤塾長(責任者佐藤の愛称)を始めとした沢山の素晴らしい方々と巡り会えたことに、心の底から感謝しています。

佐藤:
色々な人と出会って、自分の足で人生を歩んでいるんですね。楽しく仕事をされていますが倒れない程度にしましょう(笑)

これからも是非沢山の人を感動させる作品を作って、色々な場所で活躍し続けてくださいね!

遠藤:
ありがとうございます!頑張ります!

▲C&R社内でもアカデミーへの感謝を絶やさない遠藤さん。CGのプロフェッショナルとして羽ばたくお手伝いができたことを誇りに思っています。

取材後記

「好きなことを仕事にしたい!」という情熱と行動力、自分を信じて努力し続ける力があれば、思い描く道が拓けるということがわかりましたね。クリエイターとして遠藤さんのお名前がゲームを通して世に出る日もそう遠くないでしょう!

アカデミーでは授業料完全無料で、就業後に活かせる実践形式の授業を行っております。
気になる方や少しでも興味がある方は、こちらから随時説明会を開催しておりますので、ぜひ参加してみてください。

文:大曽根桃子
画像キャプション:アカデミー運営


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