理系出身から背景アーティストへ「挑戦を後押しする環境での6年間」

今回は、株式会社セガで背景アーティストとして活躍する東さんにお話を伺いました。東京電機大学でプログラミングをはじめとする情報通信工学を学んでいた東さんが、なぜCG業界に転身し、現在はゲームデザインにまで関わる幅広い活動をされているのか。その成長の軌跡を詳しく聞いてみました。


[プロフィール]
東氏
株式会社セガ背景アーティスト
東京電機大学卒業/2020年セガ入社


プログラミングからCGへの転換点

——まずは自己紹介をお願いします。

セガ第3事業部 第3オンライン研究開発デザイン2部の東です。現在は背景アーティストとして6年目になります。出身は東京電機大学という理系の大学ですね。

——大学ではCGを学んでいましたか?

実は学んでないんです。大学ではプログラミングをはじめ、画像処理工学やネットワークセキュリティ、Webデザインや通信工学などの情報通信工学分野を学んでいて、プログラミングを学ぶ過程で、CGソフト開発のためのプログラミングもあったという感じですね。

——CGに興味を持ったきっかけは?

もともと小さい頃からゲームをやっていて、中学生ぐらいの頃にプレステ3を初めてプレイした時に、グラフィックの進化に驚いたんです。それで漠然とゲームを作りたいなと考えていました。
大学にはCGをやりたいという意図で入学したんですけど、自分の求めたモデリングなどのCG技術を学べる講義はほぼなかったので、「これはどこかでアクションを起こさないと」と思い、独学でCGを始めて、同時にクリエイティブアカデミーでも学習を進めていきました。

セガでの6年間:多様なプロジェクトを経験

——6年間セガで働かれていますが、どのようなプロジェクトに関わりましたか?

最初は『PSO2 ニュージェネシス(以下、NGS)』で、背景アーティストとしてプロップ作成やマップのレイアウトを担当していました。3年目になる頃ぐらいから別のプロジェクトにも参加するようになって、現在は「新規大型タイトル」の新作の背景制作を担当しています。

——印象に残っている経験は?

僕が入社して1年経った頃がちょうど「NGS」のリリースタイミングで、その瞬間に立ち会えたっていうのはうれしくもあり、感慨深かったです。
現在のプロジェクトではいろいろな挑戦をさせてもらっているので、やりがいをすごく感じているところです。

技術力と企画力の融合

——どんな挑戦をされているか教えてください。

大きく分けて2つあります。1つ目は、従来の手法では数か月かかる作業を効率化し短縮する作業を行っています。
2つ目は、企画担当の方に、背景目線で考える”マップデザイン”を提案することです。実際に背景班のほうから「ここにオブジェクトを置きたい、経路を作りたい、視覚的にこうしたい」などの提案を行い、企画担当者と相談をしてきました。その際に、企画担当者から「こういう遊びを取り入れたいから、その空間にはオブジェクトを置いてほしくない」「そこに置いたら遊びを邪魔せずに景観が良くなりそうですね」みたいなやり取りが頻繁にあって、最近はどちらかっていうとゲームの遊びに関わる部分も企画担当者とよく話し合っている感じですね。

——もうデザイナーの域を超えそうですね。

そうですね。従来の背景デザイナーって、見た目での貢献がメインだったと思うんですが、遊びを絡めた背景っていうのを考えれば、もっと面白いものが提供できるんじゃないかと思うことが最近増えてきました。だから背景だけじゃなくても、そういった方面もかなり関わってます。

セガの企業文化:挑戦を応援する環境

——企画と背景制作の協力体制構築は自分から提案されたんですか?

自分から提案しました。基本的にリーダーに許可をもらって、こういうことをやってみたいって相談したんです。

——会社として新しい取り組みを受け入れてもらえるんですね。

そうですね。もちろん勝手にやったら怒られますけど、リーダーに許可を取って進めていけば、応援していただける環境ですね。
基本的にチャレンジを後押ししてくれますし、障害があれば相談して一緒に解決に動いてくれます。

——チーム全体の雰囲気はいかがですか?

基本的にゲームを面白くしたいって人たちが集まっているので、お互いぶつかり合うことがあっても、結局は同じプロジェクトを成功させるために、みんな頑張ってるという共通意識が根底にあって、良い環境だと思います。

課題克服と関係構築

——プロジェクトを進める中で苦労したことはありますか?

以前、とある企画担当者と背景チームとの間で認識のズレが生じ、関係がやや険悪になりかけたことがありました。
同じプロジェクトを進めるうえでの協力関係としては望ましくない状況だと感じたため、企画担当の方に何度も丁寧にアプローチをして、しっかり話し合いができる関係性を構築することができました。人間関係が一番大変かもしれないですね。

——どうやってその関係を改善されたんですか?

何度もアプローチして、この人はこういう感じだなっていうのを覚えるしかないですね。一回「嫌だな」と感じてしまっている状況でも、何度もアプローチしていくと、「あれ?じゃあちょっとご飯でも行きましょうか」と徐々に打ち解けることが多かったですね(笑)

チームワークと相互学習

——同僚の高橋さんとはどのような連携をされていますか?

めちゃくちゃ助け合ってます。高橋君は自動化技術の実績が豊富なので、そっち方面はもう高橋君に任せています。
高橋君が取り組んでいる分野については僕はまだできるか分からないですけど、とても勉強になりますし、高橋君と自分は同じ背景班で、作っているステージが違うのですが、お互いに同じツールを使用することが多いのでよく意見交換をしています。高橋君から学ぶ部分がたくさんあるなと感じています。

セガの技術的サポートと成長環境

——セガに入ってよかった点は?

挑戦を後押ししてくれる環境と、純粋にゲームを面白くしたいっていう人たちがちゃんと集まっていることですね。技術的にも、どの部署にも技術力の高い人がいて、様々な分野で相談できる人がいますし、開発ソフトについても必ず誰かがわかっているので。
特にいいなと思うのは、新しいソフトを勉強する時間をちゃんと事業部として取ってくれることです。僕は最初MayaとSubstance 3D Painterしか使えなかったんですけど、新人の1年間、プロジェクトに必要なソフトの学習等の研修を受けられる時間が用意されていたので、MayaやSubstance3D Painter以外のソフトを身に着けることが出来ました。
業務内でちゃんと勉強する時間を確保していただけるっていうのはありがたいですね。

プロフェッショナルとしての成長

——入社前後でマインドの変化はありますか?

もともと僕、仕事に対する熱意は淡泊な方で、それこそ「週3で10万円稼げれば十分」っていうタイプでした。でもいつの間にか、残業も全然苦じゃなくなりましたし、精力的に動きたいっていう意識でやっています。
入社してから、自分のことよりも「自分のプロジェクトをどうすればうまくいくか」っていうことを考えるようになった感じがします。コストについても結構考えるようになりましたね。

——なぜそう変わったのでしょう?

作品って自分の子供に近い感覚があるんですね。その作品に対して、中途半端なものを出したくないっていう気持ちがとても強いです。

人材育成への取り組み

——今後の目標は?

中間層のリソースが限られているため、新入社員が「これをやりたい」となった時にフォローやサポートが追い付かないことがあるんです。そういう意欲のある人たちをちゃんと後押しできたり、技術的にもカバーできる人材になりたいっていうのがあって。

リーダー職の方々もスケジュール関係で悩まれているので、そういった部分もサポートできるよう、マネジメント面でもスキルアップしていきたいです。新入社員に「この班にいてくれてよかった」って思ってもらえる人材を目指しています。

これから入社される方へのメッセージ

——これから入社される方へのアドバイスは?

これは難しいところですが、会社として評価される人って、やっぱりその会社のために働ける人じゃないですか。新入社員の方は「こういうことがやりたい」と思って入ってきますが、やりたくない仕事も必ずあります。
一概にやりたいことができるとは言えないんですけど、基本的に「挑戦したい」って言い続ければ、それをやらせてくれる会社なので、そこはめげずに頑張ってほしいかなっていうのもありますし。
何より給料も福利厚生も充実していますし、「この人と関わっていく上で、どうすればこの人が気持ちよく仕事してくれるだろう」っていうことを素直に考えられる人たちが揃ってると思うんですよ。人材面でもとても良いところが多いです。

クリエイティブアカデミーの学びを現在に活かして

——クリエイティブアカデミーでの学びは現在に活かされていますか?

それこそ佐藤先生の指導は、今でも活かされています。むしろクリエイティブアカデミーの方が厳しかったと思うので、佐藤先生に厳しく指導してもらったからこそ、この会社に入ってからもめげずに働けていると思います。
また、同じ道を志す人たちが周りにいる環境が、自分の頑張る理由の1つになっていました。僕の大学はCG系じゃなかったので仲間の存在は大きかったです。それが入社してからも、コミュニケーションを大事にして周りの人と関わっていこうっていう意識につながってると思います。

インタビューを終えて

東さんのお話からは、セガという会社が持つ「個人の挑戦をサポートする文化」と、東さんの人柄の良さが同時に伝わってきました。理系のバックグラウンドを活かしながら背景アーティストとして成長し、さらに企画面でも貢献される姿勢は、多様な人材がそれぞれの強みを活かせる環境があることを示しています。
特に印象的だったのは、年上の企画担当者との関係構築で苦労しながらも、「ご飯でも行きましょうか」となるまで粘り強くコミュニケーションを取り続けた姿勢です。技術力だけでなく、人間力の成長も感じられるエピソードでした。
技術面でのサポート体制や人材育成への取り組み、そして「ゲームを面白くしたい」という共通の価値観のもとに集まったチーム。これらが相まって、クリエイターが成長できる環境が整っていることがよく分かりました。
東さんのように、自分らしいキャリアを築きながら後輩の成長も支援していく取り組みは、これからゲーム業界を目指す多くの人にとって励みになるはずです。

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