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今回は、株式会社セガでシネマティクス制作チームのリードを務める関谷さんにお話を伺いました。京都大学でフランスのお化け屋敷の歴史を研究していた関谷さんが、なぜCG業界に飛び込み、わずか5年でリーダーポジションに就くまでに至ったのか。その軌跡を詳しく聞いてみました。
[プロフィール]
関谷氏
株式会社セガ シネマティクスリードアーティスト
京都大学卒業/2021年セガ入社
目次
——まずは自己紹介をお願いします。
セガの第3事業部 第3オンライン研究開発 デザイン2部でシネマティクスのアーティストをしています。シネマティクスとは、ゲームの中で映画的に見れるように作る映像演出のことです。入社は2021年なので5年目ですね。
——大学では何を学んでいましたか?
京都大学でフランスのお化け屋敷の歴史を研究していました。全然CGとは関係ない歴史学です。
——そこからCGに興味を持ったきっかけは?
元々CGもゲームも全く知らなくて、実写のカメラマンになるのが夢でした。ところが、大学で入った映研の友達がいきなり、「これからは映画じゃない。VRの時代だ」と言い出したんです。まぁ、今考えると言いすぎと思いますが…当時はVR元年などと言われていてホットな時期だったんです。それで色々調べ出して、VRからCGに興味を持ちました。新しい世界に行けるような、閉塞感がない未来的なものに触れられる感覚がしたのが良かったですね。それで仕事にするにはCGだなと。

——なぜモーションを選んだのですか?
モーションは人材不足だという話を聞いて、就職に有利だと思ったからです。祖父も父もデザインの仕事をしていた影響で絵はたくさん描いていたので、モーションが一番できそうだなと。そこはやりたいものを選ぶのではなく適正に合わせて選びました。
——当時はかなりの初心者だったとか。
パソコンもまともに触ったことがないレベルでした。最初の授業で「電源を入れてください」と言われて、ディスプレイの電源ボタンを押して「あれ、つかないな」って(笑)。C&R Creative Academy(以降:アカデミー)の面接では「毎日シャットダウンして立ち上げてます」なんて答えていましたが、入りたい一心でした。
当時は本当に後がなかったんです。せっかくいい大学に行かせてもらったのに4回生になってしまって。他の人とは違う覚悟で差をつけないと追いつけないと思い、必死にやりました。
——アカデミーをどのくらいの期間受講してセガに入社されたんですか?
8ヶ月から10ヶ月くらいでした。アカデミーでは、「誰よりも早く行って、誰よりも遅く帰る」を実践していました。母にも祖母にも心配をかけていましたから、「ここまで来たら絶対に就職するぞ」と覚悟を決めて勉強していました。

——入社してよかった点は?
レジェンドがいることです。ドリームキャストを作っていた人、アーケードゲームやテーマパークのアトラクションを作っていた人など、様々な分野の経験者がいる環境の価値を感じています。
海外出張も5回ほど行かせてもらい、インド、イギリス、ドイツ、アメリカで合計1ヶ月以上働きました。CGの技術だけでなく、コミュニケーション力が試される環境ですね。
——印象的だった学びは?
アーケードと家庭用ゲームの文化の違いですね。アーケードは「2分半が命」で、その時間で満足してもらいつつ、もう一回百円玉を入れたくなる体験を作らなければいけません。家庭用は決まったコントローラーの制約の中で、じっくり楽しんでもらうコンテンツを緻密に設計する。
アーケードは「ソフトに合わせてハードも変える」という柔軟な発想があります。また、ゲーセンでは直接プレイヤーの反応が見えるのも特徴的です。上司が初めてアーケードゲームをリリースした時、高校生がはしゃぎながらプレイしているのを見て泣いてしまったという話も聞きました。普段泣かない人なので、良い話だなと思いましたね。
——リーダーになった理由は?
単純にモーションを作るだけのアニメーターではなかったことですね。最初の仕事は昔のDCCツールのデータをMAYAにコンバートする仕事でした。大量のデータを見て「これは手作業では無理だ」と思い、独学でMelを覚えて一括処理ツールを作りました。 当初は「モーションから離れて腕が鈍るのでは」と心配しましたが、逆でした。その後アニメーターに戻ったら、何もしてないのに前より上手くなっていたんです。受験勉強で、数学を伸ばすには国語、国語を伸ばすには数学を学ぶと良いと聞きましたが、こういう科学反応ってあるんですね。両方やるといいと思います。
——複数スキルの重要性ということですね。
モーションで10人に1人のレベル、Pythonでも10人に1人のレベルなら、単純計算で100人に1人の希少性になります。

——継続的に学習を続ける姿勢について教えてください。
新しいエンジンやツールを使う際は、ショートカットを全部覚えることから始めています。ちょっと面倒ではありますけど、最初にこれをやっておくと腕は早くなりますし、機能も一通りさらえるので、おすすめです。 また、MayaならAutodeskのニュースを読んだりもしていますね。新機能が追加されていたら業務の中で時間を作り、とりあえずは一通り触ってみる、ということも習慣になっていると思います。Mayaは新機能はハイライト表示されているので、調べるのは楽です。
——現在のお仕事について
現在のプロジェクトには初期開発から参加し、今はリード職に就いています。16人のチームをまとめていますが、まだまだ新人なのでサポートのマネージャーがついてくれています。言語化能力がとても求められる職業になりましたね。

——これからCG業界を目指す人へのアドバイスは?
まずショートカットをしっかり覚えてください。そして、AIの時代が来ると思うので、AIに任せっきりではなく、AIが書いたPythonコードを査読できる人になることが重要です。バグが出た時にデバッグできるよう、コードを読めるようになった方がいいですね。
——基礎技術の重要性については?
学生や1〜2年目の方は愚直に制作した方がいいと思います。アニメーションのキーと格闘して、どれだけ大変かを身をもって知っておくことで、後で効率化の必要性を自分で感じられるようになります。
——今後の展望は?
今制作中のプロジェクトが完成したら次のことを考えたいですね。ゲーム以外のことでも挑戦したいと思っています。

関谷さんの軌跡は、まさに「素人から這い上がった」という言葉がふさわしい成長ストーリーでした。パソコンの電源ボタンすら分からない状態から、8ヶ月の猛勉強を経て現在のリーダーポジションまで上り詰めた背景には、困難な状況を逆境と捉えず、常に学び続ける姿勢がありました。
特に印象的だったのは「モーションで10人に1人、Pythonも10人に1人なら100人に1人」という複数スキルの掛け合わせによる希少価値創出の考え方です。また、セガという多様な分野の経験者が集まる環境が、彼の視野を大きく広げたことも見逃せません。
AI時代の到来を見据え、基礎技術の習得と新技術への適応力の両立を説く関谷さんのアドバイスは、これからクリエイティブ業界を目指す多くの人にとって貴重な指針となるでしょう。