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株式会社クリーク・アンド・リバー社(以下、C&R社)が運営するC&R Creative Academy(以下、アカデミー)は、受講料完全無料で、未経験からゲーム・クリエイティブ業界を目指せる育成機関です。2018年の設立から約7年。数多くの卒業生をプロの現場へと送り出してきました。
前編では、C&R Creative Academy設立の背景や、業界の課題に向き合いながら進化を続ける教育方針について伺いました。その中で佐藤塾長が何度も口にしていたのが、「何も持っていない人でも挑戦できる仕組みをつくりたい」という言葉です。
では、その思いはどこから生まれたのでしょうか。
後編では、大学中退や病気による挫折など、佐藤塾長自身の原体験に迫ります。さらに、「Game Creators Farm」誕生の背景や、伸びる受講生の共通点、そして佐藤塾長が考える“才能”の正体についても語っていただきました。
これから挑戦しようとしている人の背中を押してくれる言葉が、きっと見つかるはずです。

プロフィール
氏名:佐藤浩平(さとう こうへい)
所属:株式会社クリーク・アンド・リバー社
役職:C&R Creative Academy 責任者(塾長)
略歴:もともとゲーム業界への人材流入を増やすリクルーティングマネージャーとして活動。学校訪問やクライアントとのやり取りを通じて業界の人材育成の課題を実感し、2018年にゲーム業界向け育成機関としてC&R Creative Academyを設立。
※インタビュアー:C&R Creative Academy運営メンバー
――ここまでのお話を聞いていると、「何者でもない人が挑戦できる環境をつくりたい」という思いを強く感じます。その背景には、佐藤さんご自身の経験もあるのでしょうか。
佐藤浩平(Creative Academy責任者)※以下、佐藤:
うですね。根底にあるのは、本当に何も持たない、持たざる者でも挑戦できる仕組みをちゃんと作る、ということ。
実は根底にあるのはまさに昔の僕がそうだったからです。20歳くらいの時に、大学も退学して、やりたい事も病気がきっかけで出来なくなって。やる気はあるし、時間もあるし、覚悟もあるつもりなんだけど、どうやっていいかわからないし、お金もない。そういう状況にある人にも、道筋を作りたかったんです。
――入校前にMayaの基礎を教えたり、カリキュラムを一部公開したり、プロの講師が3ヶ月教えたりする「Game Creators Farm(以下ファーム)」は、かなり挑戦的な取り組みだと感じます。なぜ、ファームを作ろうと思ったんですか?
佐藤:
少し前の話からするんですけど、アカデミーの最初の頃は、本当に書類と面接だけで合否を決めていたんですよ。作品も何も見ていないのに、面接だけで「よし、君はクリエイターになれる」みたいな。(笑)
本社に来てもらって、説明会が終わった後にすぐ面接して。「自分に投資してほしい」「わからないけど、やりたいです」みたいな人が多かったんですけど、一人一人の話を聞いていろんな人を合格にしていたんです。
――ただ、そのやり方を続ける中で見えてきた課題もあったのでしょうか。
佐藤:
上手くいった人も大勢いた反面、もちろん上手くいかない人もいました。面接だけでは制作や業界に対する熱意をはかり切れないところもあったんです。
それで、講師や運営、エージェントと話した時に出てきたのが「本気度をはかるためには努力のや挑戦の成果をみせることが大事ですよね」という話で。じゃあ課題を設けよう、と。最初は何でもよくて「何かしらの課題を出してください」というものでした。
でも、業界から求められるクオリティが上がってきて、受講期間も延びてきた。入校ハードルも上げないと追いつけないかもしれない、となって。受講後最初に取り掛かってもらっていた課題を先に応募者の皆さんに提出してもらって、その出来栄えと「やりきった」という本気度を見て、あとは面接で判断する、という2ステップになっていきました。
――——それは、設立当初の理想とは違う状態だったんですね。
佐藤:
はい。それで数年続ける中で、業界から求められるクオリティはさらに高くなり、それに合わせてアカデミーの選考基準も徐々に厳しくなっていきました。すると、「アカデミーはなかなか受からない」「選ばれた人だけが行ける場所だよね」といった声を耳にするようになったんです。
これは、当初根底にあった「何者でもない人がちゃんとチャレンジできる仕組み」から、少しずつかけ離れてきたな、と。これは、僕が成し遂げたい未来じゃない、と思ったんです。
――その課題意識が、ファームにつながっていったのでしょうか。
佐藤:
そうです。ファームを作って、そこで色々な人が挑戦できるようにしよう、と。カリキュラムもあるし、講師もいる。やる気さえあれば、経験の有無に関係なく挑戦できる仕組みを作りたかったんです。実際に、まったくのゼロからスタートして、ファームを経由して本科へ進み、プロになった人もたくさんいます。もちろん未経験者にとって最初は大変なこともありますが、プロになるまでの道筋はちゃんと用意されています。
今までクリエイティブなことに触れてこなかった人でも、本当の意味での未経験者でも、最後までチャレンジできる環境を作りたかった。そんな思いから生まれたのがファームなんです。もちろん、ファームもまだまだ発展途上です。だからこそ、これからも改善を続けていきたいと思っています。

――これまで多くの受講生を見てきた中で、「この人は伸びるな」と思う共通点や、そう感じる瞬間はどういう時ですか?
佐藤:
よく言うんですけど、一つは楽しんでいる人。「辛いけど楽しいっす」みたいな人は、やっぱり伸びるなと思う。あとは、本当に粘り強さですね。
――楽しさと粘り強さ。その両方を持っている人が伸びやすい、と。
佐藤:
いくつかあるんですけど、まずは仮でもいいから目標が明確化できている人。「やる」と決めている人。悩むんだけど、「やるって決めてるし」というところに帰結できる人。あとは、周りと比べすぎるんじゃなくて、「昔の自分と比べて成長しているよね」という実感を感じられる人ですかね。
――他人との比較ではなく、自分自身の成長に目を向けられる人なんですね。
佐藤:
そうですね。全部を「成長にしてやるんだ、目的に繋がってるんだ」と思える人は、みんな伸びていますね。当たり前のことを言っている気もするんですけど。

――アカデミーには、専門学校卒の人や美大に通っていた人もいる中で、全くの未経験者もいます。特に未経験者の場合、どうしても基礎がすでに出来上がっているタイプの他人と比較して落ち込んでしまう方もいると思います。どうすれば前を向けるのか、佐藤さんが意識していることや、持ってほしいマインドはありますか?
佐藤:
まず以前運営チームでも話した「最適な自信のバランス」という考え方があります。自分に確信がなくて、自分のやっていることにも自信がないとなると、卑屈になってしまう。一方で、自分に確信があって、やっていることに強い自信を持ち続けてしまうと傲慢になってしまう。
その中で理想的なのは、「自分にはできる可能性があると信じているけれど、今のやり方がベストだとは思っていない状態」なんです。
「自分はきっと出来る!でもやり方は未熟だし、まだまだ色々なやり方がある。」みたいな考え方ですね。これが一番いいバランスになると思います。とはいえ、自分に確信がない人に「確信を持て」というのは難しい。だから、他の人と比べて自分の欠点を見る人って、実は批判的思考能力がある人だと思うんです。自分を客観的に見れるし、俯瞰してとらえることができる、メタ認知ができている。それってクリエイティブにとってすごく重要なんですよね。すごくいい能力を持っている。
――その能力を、自分を責めることではなく、成長に活かしていくことが大切なんですね。
佐藤:
そうですね。批判的思考能力はあるので「自分はどこで、どういう時に落ち込むのか」「どのタイミングでへこんでいるのか」「逆にどのタイミングでポジティブになっているのか」を深堀りしてもいいと思っています。
偉そうに言ってますが、昔、僕も色々あってとにかく落ち込んで、自己否定もたくさんしていたんです。そんな時に恩師から言われていた事があります。すごくよく聞く言葉ではあるんですが、「佐藤君、今だけに集中しなさい」と。
過去の原因探しじゃなくて、「今どうするか」「今どうしたいか」だけに集中する大事さを教えてもらって、この考え方は今でとても役に立っています。周りと比較したり過去を卑下したりすることはあると思うんです。それでも仮でもいいから目標を設定して、最適な自信のバランスを持って、「今に集中する」。これが大事だと思います。言うは易し行うは難し、かもしれませんけどね。
――以前、弊社内のインタビューで「才能とは時間だと思う」というお話をされていましたが、今も変わりませんか?
佐藤:
ああ、あれですね。アンジェラ・ダックワースさんの『やり抜く力GRIT』という本があって。それを読んで「まさに」と思ったんです。
まず第1ステップとして、「才能 × 努力 = スキル」だよね、と。才能がゼロの人はいないと思うんですけど、たとえば絵を描くのがすごく苦手な人でも、努力を掛け算するからスキルになる。才能が10ある人が努力を10すれば100になるし、才能が5でも20努力すれば、100になる。次のステップは「スキル × 努力 = 成果(達成)」で同じように掛け算していく。どちらにも言えるのは、「努力が掛け算になっている」ということなんですよね。
――だからこそ、「才能がないから無理だ」とは言い切れないわけですね。
佐藤:
そうなんです。どこかで聞いた話なんですけど、「世界のトップ中のトップ、頂点に立つ一握りの存在になれるかと言われたら、なれないかもしれない。でも、その競技の選手そのものには、努力次第で多くの人がなれる」という考え方があって。
ゲームクリエイターも、業界の頂点に立つような一握りの人になれるかと言われたら、なれないかもしれない。でも、ゲームクリエイターには、ちゃんと努力すればなれる可能性はあると思っているんです。
なぜかというと、僕らはこれまでたくさんのゲームに触れてきたし、映画やアニメも見ているし、CGも見ている。その中で培われた観察眼や感性、センスのようなものは、誰の中にも少なからず蓄積されていると思うんです。そこに努力を掛け合わせればスキルになるし、スキルに努力を掛け合わせれば成果になる。そういう意味で言うと、努力ってやっぱり時間だと思うから、「才能は時間」と言える部分があると思っているんです。
――「才能=時間」というのは、どういう感覚なんでしょう。
佐藤:
よく「あの人は才能があるから」で片づけられがちなんですけど、才能があるように見える人って、実は見えないところで圧倒的な時間を費やしていることが多いんですよね。、例えば絵が上手い人は、描いてきた時間だけじゃなくて、上手い絵を「見てきた」時間や、なんで良いんだろうと「考えてきた」時間が積み重なっている。それらもすべて、その人の力になっていると思うんです。
――「センス」に見えるものの正体が、時間だと。
佐藤:
そうなんです。だから「自分には才能がない」と思っている人にこそ言いたいんですけど、それはまだ時間をかけていないだけかもしれない。もちろん、同じ1時間でも、ぼーっと過ごす1時間と、目的を持って集中する1時間では価値が違う。だから個人的には「才能=時間の量×濃さ」だと思っているんです。ここで先ほど話した目的思考・仮説思考が効いてくる。何のために取り組むのかが明確な人ほど、同じ時間でもより多くのことを吸収できると思います。
――では、才能の差よりも、その人がどれだけ時間をかけられるかが重要だと。
佐藤:
完全に埋められる、とまでは言い切れないかもしれない。でも、確実に近づけると思っています。
以前お話ししたように、誰もがその分野の頂点に立てるとは限らない。頂点の一握りにはなれなくても、その競技の選手にはなれるかもしれない。クリエイターも同じだと思うんです。。そして時間って、才能がある人にもない人にも、平等に与えられているものじゃないですか。だからアカデミーは、その大切な時間を少しでも有意義なものにするための場所でありたい。
突き詰めると「才能は時間」というのは、そういう思いが込められているんです。
――最後に、これからアカデミーに挑戦しようと思っている方へ、一言いただけますか?
佐藤:
正直に言うと、「とてもいい環境だよ」とは言えないかもしれない。頑張ってもらわなきゃいけないし、僕らもまだまだ未熟だと思うし、足りていない部分も多い。苦労させてしまう部分もあるかもしれません。
でも、運営メンバーは、いいものを提供したいと本気で思っているし、成長し続けたいと思っている。だから、いいプロになれる環境ではあると思うんです。これからも、どんどん進化していくつもりです。
――今まさに挑戦するか迷っている方へ、メッセージをお願いします。
佐藤:
ちょっと迷っている人は、この記事を見て「そういう思想で運営しているんだな」と思って、怪しまずにまず一歩踏み出してほしい。(笑)
そして、その踏み出した一歩の気持ちを大事にしてほしいんです。最初から全部を完璧にやろうとか、他の人と比べて「無理だ」と思ってしまうことってあると思うけど、それはもったいない。一歩踏み出してから考えて、気づくこともあると思うから。
やったことは、無駄にはならないので。まず一歩を踏み出して、その時にどんなことを感じたか——それを大事にしてほしいなと思っています。
今回のインタビューを通して感じたのは、佐藤塾長が信じているのは「才能のある人」ではなく、「挑戦し続ける人」なのだということでした。
大学中退や病気による挫折、自信を持てなかった過去——そうした経験があるからこそ、「何者でもない人でも挑戦できる仕組みをつくりたい」という思いは、アカデミーの根幹として今も受け継がれています。
「才能は時間だと思う」。
この言葉は、決して生まれ持った能力を否定するものではありません。大切なのは、自分の目標に向かって費やす時間と、その時間の濃さ。だからこそ、今の自分に自信がなくても、挑戦する資格は誰にでもあるのだと、佐藤塾長は語ります。
そして最後に印象的だったのは、こんな言葉でした。
「一歩踏み出してから考えて、気づくこともあると思うから。」
完璧な準備ができてから挑戦する人は、多くありません。迷いながらでも、不安を抱えながらでも、一歩を踏み出す。その行動こそが未来を変えるきっかけになるのかもしれません。
挑戦するか迷っている人へ。その一歩を、どうか大切にしてください。きっとその先に、新しい景色が待っています。
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