C&R Creative Academy

モーションデザイナーはクリエイターというよりも“監督”に近い

クリーク・アンド・リバー社(C&R社)が運営するC&R Creative Academy(以下、アカデミー)責任者佐藤が、卒業生にインタビューして、本音で語ってもらうシリーズ。
アカデミーの3Dモーションコースを担当されている佐久間朋美先生とモーションコース卒業生2名のインタビューの続きになります。

モーション制作に約20年関わってきた佐久間先生が考える「モーションデザイナーの仕事論」や、授業で教えているモーション付けの秘訣、
プロになっても活かせるスキルを公開します!!


[インタビュアー]
C&R Creative Academy 責任者:佐藤浩平
[インタビュイー]
3Dモーションコース講師:佐久間 朋美
3Dモーションコース卒業生:中村さん(2022年8月卒業)
3Dモーションコース卒業生:尾崎さん(2022年9月卒業)


モーションデザイナーという職業は珍しい

佐藤(C&R Creative Academy責任者)※以下、佐藤:
佐久間先生、モーションデザイナーという職業を知らない方に、改めて、「モーションデザイン」について教えていただいてもよろしいでしょうか?

佐久間先生※以下、佐久間:
モーションデザインとは、簡単にいうと「キャラクターに命を吹き込む」ことです。
どんなに素敵なキャラクターでも動かなければ、ただのお人形です。
モーションデザイナーの私たちは、動き(モーション)を入れてあげることで、キャラクターに個性や感情を吹き込む重要な役割をしています。

佐藤:
ありがとうございます。 佐久間先生は19年間業界で経験されてきた中で、いろんな方々とお会いしたと思います。
モーションデザイナーを目指す方は少ないのでしょうか?

佐久間:
モーションデザイナーという業種に分かれていたのは、大手のゲーム会社さんくらいでした。
幅広くスペシャリストとして、キャラクターモデルからモーションや編集までやる方が多くいました。
「モーションデザイナー」として独立し始めたのは、私が業界に入った頃だと思います。

佐藤:
なるほど。モーション専属になった歴史って、20年前くらいなんですね。

佐久間:
そうですね。オールマイティーに勉強して、そこから専門的な道を選んでいくといった感じでした。

佐藤:
皆さん、そういう歴史があるらしいですよ。

中村さん(卒業生)※以下、中村:
知らなかったですね!

尾崎さん(卒業生)※以下、尾崎:
キャラクターからやるとなると、仕事のボリュームがとんでもなさそうですね…

▲「モーションデザイナー」の歴史を、現在の自分たちの仕事と照らし合わせて、肌で感じる卒業生。

総括して指揮をとる監督のようなポジション

佐藤:
確かにそうだね~。エフェクトや背景とか、コンポジターとか、数ある職種の中でモーションを選択したその面白さとはなんでしょうか?

佐久間:
よく言われているのが、モデラーさんはお人形を作る人で、そこに命を吹き込むのがアニメーターさん。
それに洋服などの装飾をつけるのがエフェクトさん、最終的に世界をまとめるのがコンポジターさんのイメージです。

モーションデザイナーは「監督」といえるでしょう!

佐藤:
映画監督ですか?

佐久間:
そうですね!私が考えるモーションデザイナーのお仕事って、総括して指揮をとる映画監督のようなポジションだと考えています。
それを考えると、喋るのが仕事みたいな部分があるんです。

たとえば、イベントシーンを制作するとします。
キャラクターや出演、サウンドなどの構成が決まったら、モーションデザイナーはそれぞれの職種と打ち合わせをします。
モーションはすべての職種と関わっているからこそ、1つの作品を作るうえで重要な役割なんです。
注意すべきなのは、打ち合わせが多い分、端的に話さなければグダグダになって終わってしまいます。
そのため、授業でもコミュニケーション能力の重要性を説明し、端的に話せるよう訓練も取り入れています。

佐藤:
他のデザイナーさんと接地面が多い職種ですもんね。

佐久間:
あと、モーションデザイナーになってからラッキーだと思ったことは、モーションデザイナーよりもモデラーさんの方が圧倒的に大変だと感じました。
モーションは確認する内容がパターン化されている場合が多くて、やることが限られているんです。
技術的な観点で言えば、ディズニーが100年前に考えた12の原則(※)でできていますから、現在も変わっていません。
それに対してモデラーさんは、どんどん技術が増えていっていますよね。扱うソフトの数も増えたり、技術面でもやることが増えていっていますし。

佐藤:
そうですね。インプットやアウトプットの量もすごいですからね。

※12の原則…「アニメーション12の原則」とは、1981年にアメリカで初版が発行された『ディズニーアニメーション 生命を吹き込む 魔法 ― The Illusion of Life ―』の中に書かれているキャラクターに命を吹き込む12種類の原則のこと

この仕事に必要なのは「技術」よりも「話術」

佐藤:
佐久間先生は「プロになった頃、私は優秀じゃなかった」って言ってましたよね?

佐久間:
そうです、優秀じゃなかったです。

佐藤:
なぜそのように思われたのですか?

佐久間:
私は最初、会社にインターンで入りました。同期は専門的な学科から来ていたので、ソフトを扱えていたんです。
私はMayaしか触れなかったので、ソフトの使い方を覚えることからがスタートでした。

佐藤:
出だしからみんなよりも遅れてしまったんですね。

佐久間:
はい。マイナスからのスタートでしたし、ソフトの使い方を早く覚えなければならず、遅れた分まで取り返さなければいけませんでした。
そこで、遅れを取り戻すために自然と身につけたのが、「言語化」や「数値化」することです。

佐藤:
数値化?どういうことですか?

佐久間:
たとえば、人は両足でまっすぐ立っていますよね。数値化すると、両足に50%ずつ体重が乗っているから真っ直ぐ立つことができるのです。
もし、足が前後に開いていた場合、後ろ足の踵はバランスを取るために自然と浮きます。
「どの位置に重心をおけばキレイなポーズになるのか?」や「足に体重が乗っているのは何%ずつなのか?」を考えるようにするんです。
このように考えることで、このポーズは後ろ足の重心は20%で、前足の重心は80%になると推測できます。

▲受講生時代に佐久間先生に叩き込まれた「言語化」や「数値化」の大切さについて、真剣に耳を傾ける。

佐藤:
プロのモーションデザイナーになると、重心の割合が目に見えてしまうのですね!なんだか、ゲームに出てくる特殊スキルみたいですね(笑)

佐久間:
実際に見られたらいいですね!このように数値化や言語化して説明ができないと、説得力がないんです。
また、言葉にすると生徒さんも納得してもらえるんですよね。結果、授業の時間も短縮できますし、効率化にもなるんですよ。
過去の私もそうですが、仕事の遅れを取り戻すことができたのは、この数値化と言語化をしてきたおかげでもあるんです。

たとえば、上司や先輩への質問がふんわりしていると、ふんわりした答えしか返ってこず、いつまでも求める答えに辿り着けません。
そうならないために、明確かつ簡潔にリスト化して聞くようにしていました。
その結果、限られた時間でも要領よく円滑にコミュニケーションがとれるようになり、成果を挙げられたのだと思います。

中村:
短時間で効率よく伝えようとした結果、言語化ができるようになったってことなんですね。

佐久間:
人の頭が左右どちらかに傾いていたとします。癖かもしれないし、そういう設定かもしれませんよね。
その確認でさえモーションデザイナーは必要になります。
ですから、相手が一発で答えられるよう、明確な質問を事前に用意しておくことが大事なんですよ。

尾崎:
それを考えると、モーションデザイナーって無口で黙々と作業しているイメージですけど、実際はお話好きが多いと感じます!

佐久間:
そうそう!案外フランクな人間が多いというのか、話が脱線するほど雑談が好きな人だったりするからね(笑)

佐藤:
時間を気にせず話してしまいましたが、まだまだ話し足りないくらいですね!

佐久間:
お!佐藤さんもお話しするのが好きなんですね。モーションデザイナーに向いていると思います!今からでも目指してみませんか?

一同:(笑)

▲定評のある佐久間先生のトークスキル。一度会ってお話するとすぐにファンになってしまう。

取材後記

佐久間先生の担当する「3Dモーションコース」は2023年2月17日実施のオープンキャンパスのミニ講座でも人気の高かった講座です。
ミニ講座の様子や先生の経歴を知ることができる記事がありますので、そちらもぜひご覧ください!

【イベントレポート】2/17(金)開催、モーションコースミニ講座

アカデミーでは授業料完全無料で、就業後に培ったスキルを活かせる実践形式の授業を行っております。
本気なら未経験でも18歳~34歳の方であれば挑戦できます。
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文:小川翔太
画像キャプション:アカデミー運営

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